この記事でわかること
- 保険の見直しの必要性について
- 高額療養費制度とは
- 傷病手当金とは
- 健康保険組合の独自給付について
- 医療保険への加入は二重保険であること
保険の見直しの必要性
資産運用をする上で大切な入金力を高めるためには、無駄な固定費を減らしていくことが重要で、保険は見直すべき項目の代表的な事項です。保険と言っても、自動車保険や火災保険、生命保険から医療保険など、種類は様々ありますが、何かしらの保険に入っている方がほとんどではないでしょうか。しかし、その保険は本当に全て必要でしょうか?また、無駄に高い保険にお金を払っていませんか?
保険の見直しをすると、毎月数千円、場合によっては万単位で支出が減るということもあり得ます。もし、1年で計10万円支出が減った場合、10年で120万円、30年で360万円となり、この差額10万円を年率4%で資産運用していた場合には30年で約560万円も差が出ることになります。
保険の見直しは、めんどくさいかもしれませんが、一度本腰を入れて検討することをおすすめします。そのためには、社会保障制度を知っておくことが大切です。今回は、高額療養費制度や傷病手当金について説明しながら、医療保険の必要性について考えてみましょう。
高額療養費制度とは
まず、高額療養費制度について説明します。厚労省によれば、「高額療養費制度とは、医療機関や薬局の窓口で支払った額※が、ひと月で上限額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度(※入院時の食費負担や差額ベッド代等は含まない)」です。年収によって月の自己負担の上限額が異なります。
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
年収約1,160万円~ | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
年収約770~約1,160万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収約370~約770万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
~年収約370万円 | 57,600円 |
住民税非課税者 | 35,400円 |
具体例:年収700万円でひと月で100万円の医療費がかかった場合
日本の国民健康保険制度では3割負担ですので、100万円の医療費の窓口負担分は30万円となりますが、高額療養費制度が適用されるので、自己負担の上限は、「80,100円+(100万円-267,000円)×1% = 87,430円」となります。なんと、本来の窓口負担30万円のうち、212,570円は高額療養費として支給され、自己負担額は87,430円となるのです。
高額療養費制度には世帯合算のしくみもあります。
厚労省によれば、「おひとり1回分の窓口負担では上限額を超えない場合でも、複数の受診や、同じ世帯にいる他の方(同じ医療保険に加入)の受診について、窓口でそれぞれお支払いいただいた自己負担額を1か月単位で合算できます。その合算額が一定額を超えたときは、超えた分を高額療養費として支給します。ただし、69歳以下の方の受診については、2万1千円以上の自己負担のみ合算されます。」となっています。個人だけでなく、同じ健康保険でカバーされる家族分も合算できるのは助かりますね。
「多数回該当」という、さらに自己負担上限額が減額されるしくみもあります。
「過去12か月以内に3回以上、上限額に達した場合は、4回目から「多数回」該当となり、上限額が下がります」(多数回該当、厚労省説明引用)。高額療養費制度で自己負担に上限があるといっても、支払いが何度も続くと大変です。そういう場合には、さらに、自己負担額が下がる仕組みはとても助かります。
所得区分 | 本来の負担の上限額 | 多数回該当時の上限額 |
年収約1,160万円~の方 | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
年収約770万~約1,160万円の方 | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
年収約370万~約770万円の方 | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
~年収約370万円 | 57,600円 | 44,400円 |
住民税非課税者 | 35,400円 | 24,600円 |
傷病手当金とは
高額療養費制度があっても、ケガや病気で入院が長引いた場合には仕事も休まざるを得ず、収入が得られなくなることが心配になるでしょう。会社員や公務員であれば、病気やケガでやむを得ずお休みをしている間も傷病手当金という制度で、一定度の収入が補償されます。
傷病手当金とは、「被保険者が業務外の事由による療養のため労務に服することができないとき、その労務に服することができなくなった日から起算して3日を経過した日から労務に服することができない期間、給与の2/3相当分が支給される手当金」です(厚労省引用)
- 支給期間:同一の疾病・負傷に関して、支給を始めた日から起算して1年6月を超えない期間
- 支給額:1日につき、直近12か月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額(休業した日単位で支給)。
傷病手当金は、業務外の事由が対象となりますが、業務上の事由で療養が必要となる場合には労災保険でカバーされます。ここで注意なのが、この傷病手当金は、(1)中小企業などの従業員が加入する「全国健康保険協会(協会けんぽ)」、(2)大企業などの従業員が加入する「組合管掌健康保険(組合健保)」、(3)公務員などが加入する「共済組合」は支給されるのですが、自営業者や非正規雇用の労働者が加入する国民健康保険では支給されません。自分が加入している健康保険でどのような補償が得られるか、一度確認しておきましょう。
健康保険組合の独自給付はスゴイ
大企業などの従業員が加入する健康保険組合では、さらに独自の給付制度があるのが一般的です。
例えば、年収700万円でひと月で100万円の医療費がかかった場合、高額療養費制度により自己負担額は87,430円になることを紹介しました。大企業の健康保険組合では、例えば「ひと月あたりの自己負担上限が2万〜3万円となるよう、さらに独自の給付が出る」会社もあります。また、傷病手当金の支給金額についても、給料の3分の2相当より加算されて支給されるところもあります。
健康保険組合では様々な独自給付がありますので、もしも健康保険組合に加入している場合は、必ず健康保険組合のHPで給付の内容を必ず一度確認しておきましょう。
医療保険の必要性について
ここまで説明したように、ケガや病気で手術や入院が必要となった場合、高額療養費制度によって実質的な自己負担額は大きく下がります。
国民みんなでお金を出し合い、万が一に備えてみんなで支え合う制度、それが日本の国民皆保険制度であり、日本の社会保障制度です。普段、給料から天引きされる社会保険料の金額をあらためて確認してみてください。結構な金額が引かれていることがわかります。すでに、この社会保険制度に相当なお金を支払っており、だからこそ高額療養費制度という仕組みが使えるわけです。
医療保険への加入は、社会保険に加入した上で、さらに保険に入ることを意味するのではないか
貯蓄がない方や自営業などで国民健康保険に入っている人にとっては、万が一の医療保険は心強いかもしれませんが、高額療養費制度なども考えると、生活防衛資金があるサラリーマンには医療保険は不要と考えます。毎月支払う医療保険、塵も積もれば結構な金額になりますので、社会保険制度も考慮した上で考えてみましょう。
高額療養費制度の対象になるのは、健康保険の適用内の治療のみですので、先進医療を受ける場合は全額自己負担です。例えば、ガンになった時に先進医療として重粒子線治療を受けた場合には、約300〜400万円の自己負担が発生すると言われています(重粒子線治療は保険適用になるケースもあります)。万が一の際に、先進医療を受けたいという場合には、先進医療を重視した医療保険を検討するのも一案ですね。
コメント